映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネが、2020年7月6日、大たい骨骨折で入院していたローマの病院にて死去。享年91歳でした。
母国イタリアのみならず、世界各国の映画音楽を多数手がけ、多くが不朽の名曲として今も愛され続けているエンニオ・モリコーネ。
本記事では、キャリアとプロフィールを簡単にまとめたあと、誰もが知る代表作・名曲10作品を私的ランキング形式で発表したいと思います。
エンニオ・モリコーネのプロフィール
エンニオ・モリコーネは、1928年11月10日、イタリアのローマ生まれ。父のマリオも、さまざまなオーケストラ楽団でトランペット奏者として活躍していた音楽家であり、幼い頃から音楽にあふれた環境で育ちました。
ローマにあるサンタ・チェチーリア音楽院で、トランペット、そして作曲を学びます。現代音楽の作曲家ゴッフレド・ペトラッシに師事し、最終的には、トランペットと作曲の両方で学位を得ています。
1950年、ラジオやテレビを中心にした編曲・作曲等でキャリアをスタート。ポピュラー音楽のミュージシャンにも楽曲を提供していました。映画音楽については、50年代半ばからゴースト・ライターとして参加するようになり、1961年の映画『ファシスト』で正式なデビューを果たしました。
1964年にセルジオ・レオーネ監督と組んだことが転機となり、以後レオーネ監督の「マカロニ・ウェスタン」の作曲で広く知られるようになります。70年代後半以降は、世界へと活躍の場を広げていきました。
その後は、感情を揺さぶる叙情あふれる音楽で世界を魅了。映画音楽の巨匠として、世界中で幾多の賞を受賞し、2007年には米アカデミー賞の名誉賞、日本でも2019年に旭日小綬章を授与されています。
私生活では、1956年にマリア・トラヴィアと結婚し、3男1女をもうけました。大変な愛妻家として知られており、マリアは作詞家として映画『ミッション』の音楽にも携わっています。息子の一人、アンドレア・モリコーネも映画音楽の作曲家です。
ハリウッドなどに移ることはなく、亡くなるまで生涯、母国のイタリアを離れることはありませんでした。
■おすすめの著作
作曲以外にも、複数の著作を発表しています。日本で翻訳されているものの中では、『あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』がおすすめです。
モリコーネと音楽家アレッサンドロ・デ・ローザの対話が軸になっており、その生涯と作曲、映画について、赤裸々に語っています。
代表曲・名曲ランキングベスト10
あくまでも個人的な好みで選んだ10作品のランキングです。
10位:『鑑定士と顔のない依頼人』(2013)
ジュゼッペ・トルナトーレがメガホンをとり、ジェフリー・ラッシュが主演したアート・ミステリーです。一人の天才鑑定士が、謎めいた女性からの奇妙な依頼に翻弄される姿を描きました。
ジュゼッペ・トルナトーレは『ニュー・シネマ・パラダイス』以後、ほとんど全ての作品の音楽をエンニオ・モリコーネに依頼しており、不動の名コンビだと言えるでしょう。上記でご紹介した著作の一つは、二人の共著でもあります。
本作のサウンドラックの中では「Volti e Fantasmi」が名曲として有名です。
9位:『続・夕陽のガンマン』(1966)
セルジオ・レオーネ監督と組んだ「マカロニ・ウェスタン」の傑作の一つであり、クリント・イーストウッドが主演しました。『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』とともに「ドル箱三部作」として知られています。
名曲揃いの中、特に「黄金のエクスタシー(L’Estasi Dell’Oro)」は単なるウェスタン・ミュージックを超えたスタンダートして今も世界中で愛されています。
8位:『バグジー』(1991)
今日のラスベガスの礎を築いたと言われる実在のマフィア、ベン・シーゲルの半生を描いたハリウッド大作が『バグジー』です。主人公をウォーレン・ベイティ、その恋人ヴァージニア・ヒルをアネット・ベニングが演じました。
アネット・ベニングがまだ何もない荒涼とした砂漠にたたずむラスト・シーンに流れる音楽が「Act Of Faith #2」。美しくもせつない余韻に胸がつまります。
7位:『海の上のピアニスト』(1998)
船内で生まれ、生涯下船することなく過ごした天才ピアニストの生きざまを描いたジュゼッペ・トルナトーレ監督作が『海の上のピアニスト』です。1900と名付けられた主人公をティム・ロスが演じました。
音楽がテーマの物語とあって、エンニオ・モリコーネの音楽を存分に堪能できる作品です。中でもピアノ曲「愛を奏でて(Playing Love)」は叙情あふれる名曲です。
6位:『ウエスタン』(1968)
こちらもセルジオ・レオーネ監督の代表作の一つであり、原題が『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』であることから、「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」とも呼ばれています。
美しいソプラノのハミングを起用した、壮大かつせつないメインテーマ曲が有名です。
5位:『ラ・カリファ』(1970)
アルベルト・ベヴィラクア監督による社会派ドラマで、ロミー・シュナイダーがヒロインを演じました。日本未公開作品にもかかわらず、エンニオ・モリコーネの代表作の一つとして必ず名前があがるほど、音楽は有名です。
あまりに美しすぎるタイトル曲「ラ・カリファ(La Califfa)」は、ヨーヨー・マやサラ・ブライトマンら多数の有名アーティストによってカバーされていますので、誰でも一度は耳にしたことがあるはずです。
4位:『マレーナ』(2000)
第二次世界大戦下のシチリア島を舞台に、美しい戦争未亡人と、彼女に淡い恋心を抱く一人の少年の姿を描いたジュゼッペ・トルナトーレ監督作が『マレーナ』です。ヒロインのマレーナを演じたモニカ・ベルッチは、本作で一躍世界的な名声を得ました。
ノスタルジーと感傷的な雰囲気にあふれる音楽は、まさにエンニオ・モリコーネの独壇場です。
3位:『ミッション』(1986)
「マカロニ・ウェスタン」の作曲家から映画音楽の巨匠へと、エンニオ・モリコーネが世界的名声を確立したきっかけになった作品が『ミッション』です。ローランド・ジョフィ監督、ロバート・デ・ニーロ主演。18世紀の南米で、キリスト教布教のため苦心する宣教師たちの姿を描いた歴史大作です。
映画ともども、サウンドトラックも傑作と名高く、中でも「ガブリエルのオーボエ(Gabriel’s Oboe)」はたくさんのカバーがなされた名曲中の名曲です。
2位:『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)
日本でも大ヒットを記録した、文字通りジュゼッペ・トルナトーレ監督とエンニオ・モリコーネの代表作が『ニュー・シネマ・パラダイス』です。シチリアの一軒の映画館を舞台に、映画技師と少年の絆、少年の初恋などをセンチメンタルに描いた感動作です。
メインテーマ、「愛のテーマ(Love Theme)」などどの曲も素晴らしく、今それらを聴くだけで映画のシーンが思い浮かんでせつなくなる人も多いはずです。
1位:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)
セルジオ・レオーネ監督の遺作であり、公開時より年を経るごとに名作の評価が高まっていった大作ギャング映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。禁酒法時代のニューヨークを舞台に、ユダヤ人ギャングたちの青春と友情を描き、ロバート・デ・ニーロが主演しました。
『ニュー・シネマ・パラダイス』と並び称されるエンニオ・モリコーネの代表作であり、たくさんの名曲が全編に散りばめられています。「マカロニ・ウェスタン」時代を彷彿とさせるメインテーマ、そして特におすすめは「デボラのテーマ(Deborah’s Theme)」です。
エンニオ・モリコーネのおすすめCDは?
映画音楽の遺作となったのは2016年の『ある天文学者の恋文』。名コンビとなったジュゼッペ・トルナトーレ監督作品で、見事なフィナーレを飾りました。
各映画のオリジナルサウンドトラックのほか、複数のベスト盤がリリースされていますが、オススメはエンニオ・モリコーネが自ら選曲・指揮した下記のグレイテスト・ヒッツ版です。
もう新作を耳にすることはできませんが、これまで生み出された数々の名曲はこれから先も世界中で愛され続けることは間違いありません。
ドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』は必見
上記の通り、数々の作品で名コンビを組んだジュゼッペ・トルナトーレ監督が手掛けたドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』はファン必見です。
モリコーネが手掛けたさまざまな映画の名場面にくわえ、クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッドら豪華な映画人へのインタビュー、モリコーネ本人へのインタビューなど盛りだくさんの内容で見ごたえじゅうぶんです。
亡くなった直後の2021年の作品ですが、日本では2023年1月に劇場公開されました。
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