2011年10月から2012年3月まで放送された、第85作目の朝ドラ(連続テレビ小説)『カーネーション』。
朝ドラ屈指の名作と言われており、2024年9月23日からは、NHK BSで通算5度目となる再放送がオンエア中です。
言うまでもなく実在人物をモデルとした事実と創作を織り交ぜた物語ですが、本記事では、モデルとなった実在の有名人という観点にしぼり、実話やその後と現在などについてご紹介しましょう。
NHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)屈指の名作『カーネーション』
朝ドラ第85作『カーネーション』は、ファッション業界で活躍するコシノ3姉妹の母・小篠綾子の実話をもとに、一部創作を織り交ぜて描いた物語です。
二宮星、尾野真千子、夏木マリがバトン形式で演じたヒロイン・小原糸子のモデルが言うまでもなく小篠綾子であり、糸子の両親や祖父母なども当然実在しますが、ここでは、有名人がモデルとなっている10人についてご紹介します。
あらすじやキャストなどについて、またドラマをもっと深く楽しむ裏話などについては、以下の2つの別の記事をご覧ください。
例えば、綾野剛が演じた周防龍一のモデルとなった実在人物などについても以下の記事の中でご紹介しています。
『カーネーション』登場人物10人のモデルとなった有名人の実話/その後と現在
※2025年2月現在の情報に基づいています。ちなみに、10人中3人は故人です。
①小原糸子→小篠綾子(故人)
既述の通り、ヒロインのモデル・小篠綾子(こしのあやこ)は、1913年(大正2年)6月15日、兵庫県加西郡(現在の加西市)生まれ。2006年(平成18年)3月26日、脳梗塞のため93歳で亡くなりましたが、生涯に渡って現役を貫きました。
小篠綾子の生涯については、すでに上記の2つの記事の中で詳しく紹介していますので、そちらを参照してください。
②長女・小原優子→コシノヒロコ
新山千春演じる長女・優子のモデルは言うまでもなくファッションデザイナーのコシノヒロコ(小篠弘子)です。
1937年(昭和12年)1月15日生まれ。1959年に文化服装学院を卒業し、「銀座小松」専属デザイナーを経て、独立しました。1964年には、大阪の心斎橋にオートクチュールの店をオープンしています。
パリコレには1982年から1993年まで毎年参加。2016年には会長職に退き、長女の小篠由佳が取締役社長に、次女の小篠ゆまが副社長に就任しました。コシノヒロコ自身は、2018年に、神戸ファッション美術館の名誉館長に就任しています。
私生活では、二度の結婚歴があります。若い頃の最初の結婚で娘を2人もうけましたが、39歳で離婚。再婚した2人目の夫・村上煕氏は芦屋で蕎麦屋「「むら玄」を経営していましたが、死別されているようです。
2025年現在、兵庫県芦屋市にある豪邸に暮らしています。
③次女・小原直子→コシノジュンコ
川崎亜沙美演じる次女・直子のモデルは、コシノジュンコ(小篠順子)。1939年(昭和14年)8月25日生まれです。
文化服装学院在学中の1960年、19歳の最年少で装苑賞を受賞。1966年には、東京・青山にブティック「COLETTE」を開店し、パリコレには1978年から2000年まで参加しました。
他にも世界各地でショーを開催したり、花園大学客員教授就任したり、舞台衣装・ユニフォームのデザインなど様々な分野で精力的に活動しています。2022年には旭日中綬章を受章しました。
私生活では、やはり2度の結婚歴があります。若い頃に結婚した写真家の斉藤亢氏とは離婚に終わり、1975年に再婚した2人目の夫・鈴木弘之氏は、ショーのプロデュースから、現在はコシノジュンコ社の代表取締役兼写真家として活動しています。40歳のときもうけた一人息子・鈴木順之氏も同社の常務取締役を務めています。
④三女・小原聡子→コシノミチコ
安田美沙子が演じた三女・小原聡子のモデルは、もちろんコシノミチコ(小篠美智子)。
1943年(昭和18年)1月29日生まれ。ドラマで描かれた通り、テニスの全国大会で優勝した後、ファッションに転身しました。1973年に渡英し、ロンドンを拠点に活動。1986年 にブランド「MICHIKO LONDON KOSHINO」をスタートさせ、大成功させました。
王立ヴィクトリア&アルバート博物館にコレクションが保存されているほか、日本人デザイナーとして「英国ファッション協会」の初の正式会員となっています。
また本ドラマをきっかけに、安田美沙子をブランドの広告キャンペーンモデルに抜擢しました。
私生活では、2度の結婚歴がありますが、ともに離婚に終わっています。一度目は、高校の同級生で旧財閥の御曹司、二度目はイギリス人のミュージシャンです。子どもはいません。
⑤孫・小原里香→小篠ゆま
優子の次女、つまり糸子の孫であり、不良少女として描かれる小原里香のモデルとなっているのはコシノヒロコの次女である小篠ゆまです。ただし、不良だった事実はなくドラマ上の創作だと公式に発表しています。
小篠ゆまは、1968年5月17日 生まれ。母と同じ文化服装学院で学んだ後に渡仏し、高田賢三のアトリエや叔母の「ミチコロンドン」のアシスタントデザイナーとして経験を積みました。
帰国後の1997年に母の会社に入社。翌年には自身の「YUMA KOSHINO」ブランドを立ち上げました。その後は、映画などの衣装、企業ユニフォーム、大学の特任准教授など、幅広い活動を行っています。
私生活では、2004年に一般企業で働く男性と結婚しており、本名は米田由実です。
⑥小沢→金子功
服飾を学ぶ直子の同級生として登場する3人の男子学生のうちの一人、小沢のモデルはブランド「ピンクハウス」などで80年代を中心に爆発的人気を博したデザイナーの金子功(写真一番左)です。
実際、コシノジュンコ、金子功、下に登場する高田賢三、松田光弘らは、その後にファッション界をリードすることになることから、文化服装学院「花の9期生」と呼ばれていました。
金子功は同校卒業後、セツ・モードセミナーでも学び、「アドセンター」勤務を経て1973年に「ピンクハウス」を設立しました。1990年には自身のブランド「カネコイサオ」を設立し、そちらに専念するようになりましたが、2007年には第一線から引退しました。妻は元モデルの立川ユリです。
⑦吉村→松田光弘(故人)
同じく直子の同級生・吉村のモデルは、「ニコル」ブランドで知られるデザイナーの松田光弘です。
金子功と一緒にセツ・モードセンターでも学び、「三愛」を経て、1967年にブランド「ニコル」を立ち上げました。1983年にはニューヨークコレクションで発表し、多くのセレブリティを顧客に抱える人気ブランドとして君臨しました。
2008年5月17日、肝細胞癌により74歳で死去。喪主は若い頃に結婚した妻が務めたようです。
⑧斉藤源太→高田賢三(故人)
同じく直子の同級生・斉藤源太のモデルは、言うまでもなくファッションデザイナーの高田賢三です。
劇中で描かれた通り、いち早く渡仏し、ブランド「KENZO」の前身となる「JUNGLE JAP」を開店。1970年には日本人初のコレクションを開催しました。その後の世界的活躍については言うまでもありません。
1993年には、LVMH 傘下となり、1999年にはデザイナーとして第一線から退きました。2020年10月4日、新型コロナウイルスの合併症により81歳でパリにて死去。生涯独身でした。
⑨ジョニー→沢田研二
人気デザイナーとなった直子の顧客として登場するジョニーのモデルは、その名から明らかなとおり、ジュリーこと沢田研二で間違いないでしょう。
コシノジュンコは、2019年の日経新聞「私の履歴書」の中で、そのいきさつを以下の通り語っています。
渡辺プロダクションを創業した渡辺美佐さんが「面白い服ね」と興味を持ってくれた。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48424830Z00C19A8BC8000/
ある日、その渡辺さんから私の元にこんな依頼が届く。
「タイガースというグループがデビューするのでステージ衣装を作ってほしい……」
タイガースは京都で活動していた沢田研二さんらがメンバーで、後に「モナリザの微笑」などヒット曲を連発する国民的スターに登り詰める。
私の衣装も脚光を浴び、それがきっかけで多くのグループ・サウンズ(GS)の衣装を手がけるようになった。
沢田研二は、70歳代中盤となった今も根強いファンに支えられて活動を続けています。
⑩白川ナナコ→加賀まりこ
直子の知り合いとして登場する新進女優の白川ナナコですが、加賀まりこがモデルではないかと言われています。ただし相違点も多く、実際には他にも大原麗子ら複数の女優を組み合わせたキャラクターのようです。
同じく上記「私の履歴書」の中で、以下の通り語っています。
作詞家の安井かずみさんと出会ったのは1967年。顔見知りの女優、加賀まりこさんが外苑前の私の店「コレット」に連れてきてくれたのだ。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48418770Z00C19A8BC8000/
私と安井さんは同い年。加賀さんは4つ下。同世代の3人はすぐに仲良しになり、毎日のようにつるんで遊び回るようになった。
加賀まりこは80歳を超えた今もときおりテレビに出演するなど、今も変わらぬ存在感を持つ女優として活躍しています。
『カーネーション』は実話とフィクションのバランスが秀逸!
以上、有名人がモデルとなっている登場人物10人についてご紹介しました。
それぞれのプロフィールを見ると、ドラマとは異なる点も多々ありますが、そうした実話とドラマ上のフィクションのバランスが実に秀でているのが『カーネーション』ではないでしょうか?