ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズが素晴らしい演技を見せた恋愛映画の新たな傑作『ブルーバレンタイン』。
監督は、寡作ながらどれも秀作揃いのデレク・シアンフランスです。
本記事では、あらすじやキャストなど簡単な紹介を交え、個人的な感想や考察からレビューしたいと思います。
『ブルーバレンタイン』は21世紀に生まれた恋愛映画の傑作!
『ブルーバレンタイン』は、2010年に公開され、カンヌ国際映画祭、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞はじめ、様々な映画祭でノミネート・受賞を果たした、恋愛映画の傑作です。
主人公の男女を演じたのは、『きみに読む物語』や『ハーフ・ネルソン』『ラースと、その彼女』などで注目されていたライアン・ゴズリング、そして『ブロークバック・マウンテン』で数々の賞にノミネートされたミシェル・ウィリアムズ。若手の実力派として、揃って非常に高い評価を得ました。
監督は、気鋭のデレク・シアンフランスです。
デレク・シアンフランス監督について
メガホンをとったデレク・シアンフランス監督は、1974年1月23日生まれ、コロラド州レイクウッド出身。
1998年の監督・脚本デビュー作『Brother Tied(日本未公開)』が、サンダンス映画祭で高い評価を得たのち、10年以上のブランクを経て発表した2作目が『ブルーバレンタイン』でした。
リハーサルを行わず、ほとんど1シーン1ショットの低予算で撮影された本作は絶賛され、一躍その才能を広く知られるところとなりました。
非常に寡作で知られる監督ですが、以下の通りその後の作品も秀作揃いです。
①映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)
続く3作目でも、ライアン・ゴズリングと再タッグを組みました。アメリあるある田舎町で繰り広げられる二組の家族の15年を描くもので、主人公が2度入れ替わる三部構成になっています。ブラッドリー・クーパー、故レイ・リオッタ、マハーシャラ・アリら他のキャストも豪華です。
②映画『光をくれた人』(2016)
第一次大戦後、ある孤島の灯台守として暮らす夫婦が、遭難し流れ着いた赤ちゃんをわが子として育てる姿とその後に直面する過酷な運命を描きます。夫婦をマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルが熱演しています。
③ドラマ『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』(2020)
マーク・ラファロが双子の兄弟を一人二役で演じ、ゴールデングローブ賞、プライムタイム・エミー賞の主演男優賞をW受賞した全6話のドラマシリーズです。日本でもU-NEXTで配信されています。
『ブルーバレンタイン』の主要登場人物とキャスト
●ディーン/ライアン・ゴズリング
●シンディ/ミシェル・ウィリアムズ
●ボビー・オンタリオ/マイク・ヴォーゲル: シンディの昔の恋人。
●ジェリー・ヘラー/ジョン・ドーマン:シンディの父
●祖母/ジェーン・ジョーンズ:シンディの祖母
『ブルーバレンタイン』あらすじ・考察/感想レビュー
若いディーンとシンディが出会う。恋愛初期のときめきや不安、激しい情熱から、結婚を経て、やがて年月とともに訪れる倦怠や失望、二人の心が次第に離れていき、どうしようもない出口に向かって突き進んでいく軌跡。
それは、一度でも真剣な恋愛をしたことのある者なら、必ず心のどこかに痛みと共感を覚える、ごく普通の二人の数年間である。
「誰かの夫になりたかった訳じゃない。誰かの父になるのが人生の目標じゃなかった。
でもこれは俺が求めていた人生だ。気づかなかったが、他には何も望まない。大事なのは家族だ」
喧嘩して一度は草むらに捨てた結婚指輪を、無様に拾いに戻る二人。
二人がついに避けられない破局を迎える時、交わされる言葉の数々に泣いた。
デレク・シアンフランス監督は、単なる時系列に描くのではなく、出会ってから結婚するまで、そして、結婚生活が崩壊していくまでという二つの異なる時間を同時進行で描いて交差させ、ラストで、愛の成就の瞬間と破局の瞬間をぴたりと重ね合わせる。
そして、続くエンドクレジットの素晴らしさ。
それまでの生々しい映像から一転、打ち上げ花火をオーバーラップさせ、二人の年月を切り取ったスナップ写真の数々がスクリーンいっぱいに拡がる。
花火は、「儚さ」や「一瞬の輝き」の象徴であろうか。
それでもなお、狂おしいまでに、愛することの意味を肯定的に捉えようする強い思いのこもったこの映像を、決して忘れることはないだろう。
シンディが、両親の不幸な結婚からたえず抱き続けた、「やがては消える愛に意味はあるのか」という問いに対する答えが、まさにここにある。
また、大好きなシーンの一つが、二人の初めてのデート、夜の街角でダンスをするところ。
「君は、いつも傷つけてはいけない人を傷つけてしまう」
誰もいない深夜の路上、安っぽい洋品店のウィンドウの前で、ディーンがウクレレを弾きながらそんなふうに歌い、シンディがあわせてステップを踏んでみせる場面は、せつないまでに愛おしい。
それは、二人が出逢ってから別れるまでの年月のうちで、実はあのときが最も幸せだった、と後から振り返って初めてわかるようなひとときだったはずだ。
人は誰もが、過去の恋の封じ込めた記憶の奥に、そんな瞬間がある。
『ブルーバレンタイン』の特典付きブルーレイ/DVDも必見!
本作が気に入った方は、特典映像付きのスペシャル版ブルーレイ/DVDもおすすめです。
なんと20分にもおよぶ未公開シーン、さらに主演二人のインタビュー映像、デレク・シアンフランス監督自身によるオーディオコメンタリー解説など、非常に見ごたえのある特典映像がついており必見です。