『ブレードランナー』主要キャスト9人のその後と現在/故人・考察レビュー

ブレードランナー 映画

フィリップ・K・ディックの小説を原作に、リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演で1982年に公開されたSF映画『ブレードランナー』。

公開から年月を増すごとに称賛の声が高まり、今や映画史に残る名作の一つに数えられています。

2017年には続編が公開されましたが、オリジナルの本作が公開されてから早40年以上! 伝説と化した主要キャストのその後と現在を中心に紹介しつつ、個人的な考察・感想を交えてレビューしたいと思います。

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映画史に燦然と輝くSF映画の金字塔『ブレードランナー』

アメリカのSF作家フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作に、リドリー・スコットがメガホンをとり完成させた1982年の映画『ブレードランナー』。

公開当初の酷評に始まり、その後もさほど大きな話題を呼び起こすことはありませんでしたが、年を経るごとに評価を増していき、今や映画史に残るSF映画の傑作としてカルト的な人気を博しています。

2019年の近未来を描いた独特の世界観、そして主演のハリソン・フォードはじめ、ルトガー・ハウアーやショーン・ヤングらキャスト陣の名演も見どころです。

2017年には、待望の続編となる『ブレードランナー 2049』が公開され、一定の評価を得ましたが、まず、40年以上前となるオリジナル作品の主要キャスト9人のその後と現在についてご紹介しましょう。

『ブレードランナー』主要登場人物/キャスト9人のその後と現在

2024年12月現在、残念ながら9人のうち3人が故人です。

「ブレードランナー」と呼ばれる、レプリカントを抹殺する仕事を請け負う本作の主人公がリック・デッカードです。

演じたハリソン・フォードは、1942年7月13日、イリノイ州シカゴ生まれ。『スター・ウォーズ』シリーズのハン・ソロ役、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に始まる『インディ・ジョーンズ』シリーズにより、不動の人気を確立したまさに脂の乗り切った時期に出演したのが本作でした。

世界的大スターとしてのその後の活躍については今さら言うまでもありません。上記2つの大ヒットシリーズに比して、『ブレードランナー』は当初比較的地味に扱われていましたが、今や、文字通りハリソン・フォードの代表作の一つに数えられています。

2017年公開の続編『ブレードランナー 2049』にも再登板、2023年には、シリーズ5作目『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』公開、2025年に公開予定の『キャプテン・アメリカ:ニュー・ワールド・オーダー』にも出演するなど、80代を迎えた今も現役です。

私生活では、2度の結婚・離婚を経て、2010年に女優のキャリスタ・フロックハートと再婚しました。子どもは先の2度の結婚で実子が4人、キャリスタ・フロックハートとの間に養子が1人います。

人間に反逆に出たレプリカント集団のリーダーであり、屈強な肉体と冷徹な頭脳を併せ持つ戦闘用レプリカントがロイです。

演じたルトガー・ハウアーは、1944年1月23日、アムステルダム生まれのオランダ人俳優です。母国での活動を経て、1981年の映画『ナイトホークス』で、事実上のハリウッドデビュー。続く本作のロイ役で、実力派として広く知られる俳優となりました。

その後の主な出演作には、映画『コンフェッション』や『バットマン ビギンズ』、テレビドラマ『トゥルーブラッド』などがありますが、『ブレードランナー』を超える評価を得られる作品に恵まれることはありませんでした。2019年7月19日、膵臓癌によりオランダの自宅で死去。75歳でした。

私生活では、最初の結婚で一女をもうけたのち離婚、1985年に別の女性と再婚しています。また、過激な環境保護テロ組織「シーシェパード」の熱心な支援者として知られ、そのことも実力に比して作品に恵まれなかった理由の一つだと言われています。

タイレル博士の秘書がレイチェルです。博士の姪の記憶を埋め込まれた新型のレプリカントであることを、当初は本人も知らされていませんでしたが、デッカードがその正体を見抜きます。

演じたショーン・ヤングは、1959年11月20日、ケンタッキー州ルイビル生まれ。モデルから女優へと転身し、本作に続く『デューン/砂の惑星』『追いつめられて』『ウォール街』などで人気女優の地位を築きました。

ところが、交際していたジェームズ・ウッズに対するストーカー行為、アルコール依存症、パーティー会場における暴行で逮捕、映画製作会社のオフィスから無断でパソコン2台窃盗など、さまざまな奇行や問題を起こして、キャリアは著しく低迷。メジャー作品からは事実上干された状態です。

婚姻も、1990年に俳優の男性と結婚し、息子2人をもうけましたが2002年に離婚。しかし、2011年に復縁し、同じ男性と再婚しています。

2017年公開の続編『ブレードランナー 2049』の登場するレイチェルはCG合成されたものであり、ショーン・ヤングはアドバイザーとして関わっただけです。

可愛い容姿とは裏腹に狂暴な顔を持つ、性的慰安のために作られたレプリカントがプリスです。ロイの指示により、セバスチャンのアパートに乗り込みます。

演じたダリル・ハンナは、1960年12月3日、イリノイ州シカゴ出身。本作に続き、1984年の『スプラッシュ』で人魚を演じ、一躍人気スターとなりました。その他代表的な出演作には、『愛しのロクサーヌ』『マグノリアの花たち』『キル・ビル』などがあります。

私生活では、ミュージシャンのジャクソン・ブラウン、故J.Fケネディ・ジュニアとの熱愛で知られましたが成就せず、2018年にミュージシャンのニール・ヤングと結婚しました。子どもはいません。

『キル・ビル』製作中のセクハラに対し、MeToo運動を起こした女性たちの一人です。また共演者のルトガー・ハウアーと同じく、テロ組織「シーシェパード」の支援者としても有名です。

怪力と巨体を持つ労務レプリカントがリオンです。

演じたブライオン・ジェームズは、1945年2月20日、カリフォルニア州レッドランズ生まれ。本作の他にも、その風貌を活かした役柄を得意とし、『48時間』『レッドブル』『レッドスコルピオン』『シルバラード』『フィフス・エレメント』などのアクション・ホラー映画を中心に独特の存在感を放ち続けました。

100本を超える映画に出演しましたが、1999年8月7日、心臓発作により54歳の若さで死去。その時点でも8本の出演作が公開を控えているという人気ぶりでした。

私生活はあまり公にしていませんでしたが、一度結婚・離婚歴があります。



蛇使いの妖艶なダンサーとして潜伏する、タフな戦闘女性レプリカントがゾーラです。

演じたジョアンナ・キャシディは、1945年8月2日、ニュージャージー州ハドンフィールド生まれ。60年代はモデルとして活動したのち、1973年に女優デビューしました。テレビドラマ『ローラーガールズ』や『バッファロー・ビル』、1983年の映画『アンダー・ファイア』で注目を集め、その後は、多数の映画、テレビドラマに出演しています。

2000年代に入っても、人気ドラマ『シックス・フィート・アンダー』でプライムタイムエミー賞など複数の賞の候補となるなど、人気と実力を兼ね備えた女優として現役です。

私生活では、若い頃に一度結婚・離婚歴があり、子どもが2人います。

レプリカントの生みの親であるタイレル社の社長が科学者のタイレル博士です。

演じたジョー・ターケルは、1927年7月15日、ニューヨーク市ブルックリン生まれ。 主に1950年代から60年代にかけ、性格派俳優として多くの映画・テレビドラマに出演しました。スタンリー・キューブリック作品には複数回登場し、中でも1980年の『シャイニング』で演じたホテルのバーテンダー役は有名です。

1997年のビデオゲーム版『ブレードランナー』のボイスオーバー、および1998年のシットコムドラマ『ボーイ・ミーツ・ワールド』を最後に俳優業から引退しました。

2022年6月27日に肝不全により94歳で死去。私生活では、一般女性と結婚し、息子が2人います。

タイレル社に雇われた、遺伝子工学の技術者です。自身が制作したおもちゃとともに暮らすアパートにプリスを招いたことから恐怖を味わうことになります。

演じたウィリアム・サンダーソンは、1944年1月10日、テネシー州メンフィス生まれ。70年代からバイプレーヤーとしてさまざまな映画・テレビドラマに出演しており、人気ドラマ『ニューハート』のラリー役、『トゥルーブラッド』の保安官バド役などで全米では広く知られています。

2019年には自叙伝を発表し、翌年には俳優業を引退しました。私生活では、既婚者で、息子1人と孫が2人います。

意味深な折り紙を折るロサンゼルス市警の刑事がガフです。

ガフを演じたエドワード・ジェームズ・オルモスは、1947年2月24日、ロサンゼルス生まれのメキシコ系アメリカ人です。野球選手志望からミュージシャン、さらに俳優に転じた異色の経歴を持ち、テレビドラマ映画の端役でキャリアを積みました。

ブロードウェイの舞台『ズートスーツ』でトニー賞にノミネートされ、映画版でも同役を演じて一躍注目を集めます。世界的ヒットドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』の警部役ではプライムタイムエミー賞とゴールデングローブ賞を受賞し、名実ともに人気俳優としての地位を確立しました。

1988年の映画『落ちこぼれの天使たち』ではゴールデングローブとアカデミー主演男優賞ノミネート、1992年には『アメリカン・ミー』を監督するなど、その後もメキシコ系俳優の代表的存在として活躍しています。『ブレードランナー 2049』にも再登場します。

私生活では、3度の結婚・離婚であわせて6人の子どもがいます。2022年には咽頭ガンを患ったものの寛解したことが翌年公表されました。



監督・原作者・音楽担当のその後

監督を担当したリドリー・スコットは、その後も多くの話題作、賛否両論うずまく問題作を手掛けています。代表的作品には、アカデミー監督賞初ノミネートとなった1991年の『テルマ&ルイーズ』、アカデミー作品賞に輝いた2001年の『グラディエーター』、再びアカデミー作品賞候補となった2015年の『オデッセイ』などがあります。

監督賞には何度もノミネートされながら、無冠の帝王とも言われることも…。今も現役で、2024年12月現在最も新しい作品は『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』です。

原作者のフィリップ・K・ディックは、映画の公開直前だった1982年3月2日、脳梗塞を起こし53歳で急死しました。完成する前のラッシュフィルムの段階のものを鑑賞し、気に入っていたと言われています。

音楽を担当したギリシア人音楽家ヴァンゲリスは、本作の前年公開の『炎のランナー』でアカデミー作曲賞を受賞し、世界的ヒットに導きましたが、『ブレードランナー』の楽曲もそれに劣らぬ名曲揃いです。日本でも人気が高く、1983年の『南極物語』の音楽が広く知られています。2022年5月17日、新型コロナウイルスに感染後、心不全により79歳で死去しました。

『ブレードランナー』のバージョン違い/メイキング/続編について

『ブレードランナー』には、全部で7つのバージョンが存在すると言われることもありますが、それはどんな映画でも普通に行われるテスト試写用のバージョンやテレビ放送版、各国ごとの微妙な修正版なども含んだものであり、実質的には以下の3バージョンとみてよいでしょう。

ときに数十分の新たなシーンが追加されることもある他の映画の再編集版に対し、本作はほんの短いシーンの追加に過ぎず、下記の表のとおり、放映時間に大きな差はありません。

追加シーンなどから、特にファンの議論を呼んできたのが、果たしてデッカード自身もレプリカントなのか、ということでした。

オリジナル劇場公開版ディレクターズ・カットファイナル・カット
公開年1982年1992年2007年
時間116分116分117分
主な修正・US公開版とインターナショナル版あり
・暴力シーンの
あるなし
・公開10周年記念
・デッカードのユニコーンの夢を追加

・エンディング映像の削除
・公開25周年記念
・デジタルリマスタ
リング
・デッカードのユニコーンの夢を追加
・ゾーラの死の場面を再撮で修正
・バーで女たちが踊るシーンなど追加

様々な特典映像などが収録された35周年および『ブレードランナー2049』劇場公開を記念したスペシャルブルーレイ3枚組はファン必見です。

本作については長短、複数のドキュメンタリー作品が存在していますが、最も有名で見ごたえがあるのは、2007年、「ファイナル・カット」公開に合わせて製作された『デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー』です。

主要キャストや監督へのインタビュー、キャスティングや製作秘話、様々な疑問についての考察・分析などで構成された2時間半は、必見です。

DVD化はされていないようですので、視聴のチャンスがありましたらお見逃しなく!

2017年に公開された待望の続編です。カナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴがメガホンをとり、リドリー・スコットは製作総指揮を務めました。

2049年を舞台し、ライアン・ゴズリングが主演、ハリソン・フォードも老いたリック・デッカード役で登場します。失敗に終わりがちな名作の続編にもかかわらず、アカデミー賞5部門ノミネート・2部門受賞を含む、様々な映画祭で高評価を得ました。



『ブレードランナー』の考察・感想レビュー

リドリー・スコット監督によるSF映画『ブレードランナー』。
アナログ撮影された最後のSF映画であり、近未来のフィルム・ノアールなどとも称されるが、映画史に燦然と輝く傑作であることに異論を挟む人はいないだろう。

先日、ファイナル・カット版とメイキング『デンジャラス・デイズ』の両方をあわせて鑑賞し、再びこの世界の虜になってしまった。

舞台は2019年のロサンゼルス。
人造人間であるレプリカントと、逃亡した彼らを処刑するブレードランナーの死闘の物語、と大筋を述べたところで、この映画の何物をも説明しえない。

様々な解釈がなされ、何冊もの解説本が出版されているが、自分にとっての魅力は、何と言っても、せつなすぎるほどの、生の哀しみである。それを体現するのがレプリカントであり、彼らは、自分が人間ではなく、まもなく製造とともに定められた寿命を向えると知ったときから、恐怖と不安の中を生きることになる。

生とは何か、死とは何か、記憶とは何か。

彼らが向える死に様は、一様に壮絶であるが、それは生への強い執着の現れだ。

模型や単純な合成写真を使ったアナログの撮影とは思えない、今観ても全く色褪せることのない映像美。
背後に流れる、完璧な、あまりに美し過ぎるヴァンゲリスの音楽。
メイキングを見ると、監督のリドリー・スコットが、いかに一切の妥協を許さず、自分の美意識を貫き通したか、よくわかる。

最後まで生き残ったレプリカントのロイが、ついに死を迎えるとき呟く言葉が素晴らしい。

「俺は、貴様ら人間が想像もできないものを見てきた。
オリオン座の近くで炎に包まれた戦艦、
タンホイザーゲート近くで輝くCビーム。
それら瞬間も、やがて時が来れば
すべてが失われる
雨に洗われる涙のように……。
死ぬ時が来た」

公開時には、『ET』など心温まる、ヒューマンでわかりやすいSFに隠れ、ほとんど注目されなかった。
それが今や、つい最近もイギリスの映画雑誌が史上最高のSF映画1位に選出するなど、多大な影響力を持つに至った本作。

日本公開時、「レプリカント軍団、人類に宣戦布告」との宣伝コピーを作った人は、きっと抹殺したいキャリアの汚点だと思っているに違いない。

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