2009年から2024年まで、16のシーズンが放送・配信された人気リアリティ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』。
本記事では、全歴代優勝者のプロフィールと素顔、およびその後と現在を一挙にご紹介します。
『ル・ポールのドラァグ・レース』シーズン1~16の歴代優勝者16人を紹介!
さすが過酷な競争を勝ち抜いてトップに上り詰めただけあって、優勝した16人はみな突出した個性を持つドラァグクイーンたちばかりです。
それぞれのインスタグラムのアカウントとともに、シーズン1から最新シーズン16まで、順に全16人をご紹介します!
※日本ではまだ配信されていないシーズンもありますが、2024年1月現在、各プラットフォームから配信の予定がなく、またすでに日本版Wikipediaにも書かれていますので、すべてネタバレありでご紹介します。
シーズン1(2009年):ビビ・ザハラ・ベネ/BeBe Zahara Benet
栄えあるシーズン1の優勝者、ビビ・ザハラ・ベネは1981年3月20日、アフリカのカメルーン生まれ。家族とともにフランスに移り、その後アメリカのミネアポリスに移住しました。
ミネアポリスで開催されたゲイ・プライドに出演していたところをル・ポール本人から誘われたのがきっかけです。見事、優勝者となったにもかかわらず『ル・ポールのドラァグ・レース:オールスターズ』シーズン3にサブライズで登場し、ここでもTOP4 に残りました。
自らを「ドラァグアーテイスト」または「ドラァグパフォーマー」と名乗り、歌手として複数のシングルをリリースしているほか、イレイジャーやドリー・パートンのMVにも登場しています。
2020年には、4人のドラァグクイーンがワーキング・ウーマンを美しい花嫁に変身させるリアリティ番組『Dragnificent!』に出演しました。また、ボブ・ザ・ドラァグ・クイーンら他の黒人クイーンたちと「Nubia」ツアーを立ち上げ、大人気のクラブイベントとなっています。
シーズン2(2010年):タイラ・サンチェス/Tyra Sanchez
Ay, no. Tyra Sanchez, ganadora de la temporada 2 de RuPaul’s Drag Race, fue arrestada por vandalismo. Parece ser que graffiteó propiedad privada con la frase “Don’t move here ever”. Ojalá que este proceso sea lo más leve posible para ella y que el glitter la acompañe. 👮🏾♀️⚖️ pic.twitter.com/yxV7vKo3J0
— Homosensual 🏳️🌈 (@SoyHomosensual) August 24, 2020
色気のある抜きんでた美しさを持ちながら、何かとお騒がせの番組きってのトラブルメーカーが、シーズン2の優勝者タイラ・サンチェスです。
1988年4月22日生まれ、フロリダ州ゲインズビル出身。2005年に生まれた息子がいるという点でも異色です。
優勝後のキャリアは決して穏やかとは言えず、これまで、SNSにおけるさまざまな炎上発言、他のドラァグクイーンとの確執、ル・ポール主催のエキスポ「DragCon」に対するアンチ行動など、次々と問題や騒動を起こしてきました。
2019年10月にはこれまでの行いに対して謝罪コメントを発表し、心機一転再び第一線に戻るのかと思いきや、2020年3月、正式にドラァグクイーンからの引退を表明しました。インスタグラムからもドラァグクイーン時代の投稿を全て削除しています。
シーズン3(2011年):ラジャ/Raja Gemini
シーズン3の優勝者ラジャは、1974年6月14日、カリフォルニア州ボールドウィン・パーク生まれ。両親はインドネシア系の移民であり、幼少時の6年間をインドネシアに戻って過ごしました。
エキゾチックな容姿に、洗練されたハイファッションとメイクで毎回審査員を魅了しましたが、実際、自らトップ・メイクアップアーティストとして多くの有名セレブを手掛けています。顧客にはル・ポールはもちろん、イギー・アゼリア、イマン、タイラ・バンクス、アダム・ランバートなどがいます。
タイラ・バンクスがホストの人気リアリティ番組『アメリカズ・ネクスト・トップモデル』では、メイクアップアーティストとして長らく携わっていました。
2017年12月には、カナダ人のライアン・ターナーと同性婚を果たしています。結婚式にはシーズン3出演者からマニラ・ルソンらドラァグ仲間も参列したようです。
シーズン4(2012年):シャロン・ニードルズ/Sharon Needles
ダーク・ゴシックともパンクとも言える超個性派ドラァグクイーンのシャロン・ニードルズは、1981年11月28日生まれ、アイオワ州ニュートン出身です。2004年、ペンシルベニア州ピッツバーグに移り、ドラァグを始めました。
シーズン4の優勝者となってからは、4枚のアルバムと複数のシングル曲をリリースし、ビルボード・ダンスチャートの上位に食い込んだ曲もあります。
プライベートでは、同番組のシーズン5に出場したドラァグクイーンのアラスカと4年間交際していましたが、2013年に破局。その後は、特殊効果アーティストの男性と交際し、婚約に至りましたが、こちらも2020年夏に破局したようです。
現在もピッツバーグを拠点に活動していますが、2020年7月、未成年者なのに飲酒やドラッグを強制されたというファンからの告発を受け、スキャンダルとなりました。
シーズン5(2013年):ジンクス・モンスーン/Jinkx Monsoon
シーズン5で見事栄冠に輝いたジンクス・モンスーンは、1987年9月18日生まれ、オレゴン州ポートランド出身です。
ルシル・ボールなど往年のコメディ女優にインスピレーションをえ、また母方の血筋であるユダヤ系独特の濃いキャラを持ち味にしています。
2006年以降は、シアトルを拠点に活動。ドラァグクイーンとしてのみならず、俳優として『レント』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』や『ヘアスプレー』など数々のミュージカルの舞台を踏んできました。
2020年にはル・ポール主演のNetflixドラマ『AJ&クイーン』に出演しました。ジェンダーはノンバイナリーを公言しています。
シーズン6(2014年):ビアンカ・デル・リオ/Bianca Del Rio
歴代優勝者の中でも破格の活躍をしているのがビアンカ・デル・リオです。1975年6月27日生まれで、ルイジアナ州グレットナ出身。父親がキューバ系、母親がホンジュラス系移民の一家に生まれました。
衣装デザイナーとしてキャリアを積むかたわら、1996年頃からドラァグクイーンとしての活動をスタート。さらに俳優としても、いくつかの舞台やテレビドラマに出演していました。
優勝してからは、スタンドアップ・ショーの企画・出演をしたり、映画『ハリケーン・ビアンカ』と続編『ハリケーン・ビアンカ:ロシアより憎しみをこめて』に主演したりと、その活躍ぶりは目覚ましいばかり。
2019年には、ロンドンのウエストエンドで上演された話題のミュージカル『Everybody’s Talking About Jamie~ジェイミー~』に出演したほか、同作の映画版にも登場します。
シーズン7(2015年):ヴァイオレット・チャチキ/Violet Chachki
驚異的なウエストの細さとグラマラスなスタイルで優勝したヴァイオレット・チャチキは、1992年6月13日生まれ、ジョージア州アトランタ出身。エクアドルとアメリカのハーフです。
1950年代の理想的女性像を反映させた、フェティッシュで芸術的なスタイルを得意とし、ファッション業界での活躍も目立ちます。ランジェリー・ブランドの広告モデルを務めたり、ミラノコレクションではモスキーノのショーに登場したりしました。
また、バーレスク・ダンサーの顔も持ち、2017年には女王ディタ・フォン・ティースのショーに出演しました。
ジェンダー・フルイドあるいはノンバイナリーであることを公言しています。
シーズン8(2016年):ボブ・ザ・ドラァグ・クイーン/Bob the Drag Queen
シーズン8の優勝者ボブ・ザ・ドラァグ・クイーンは、1986年6月22日生まれ、ジョージア州コロンバス出身です。
圧倒的な表現力と抜群のコメディセンスを生かし、番組後は仲間のドラァグクイーンたちとさまざまなTVショーやポッドキャストのホストを務めているほか、俳優としてもめざましい活躍をしています。
出演作には、HBOのドラマ『High Maintenance』やNetflixの『メリー・アン・シングルトンの物語』、舞台『エンジェルス・イン・アメリカ』などがあります。
2020年にスタートした、黒人ドラァグクイーンたちのクラブイベント「Nubia」のメンバーの一人です。
シーズン9(2017年):サーシャ・ベロア/Sasha Velour
前衛アートをメイクや衣装に取り入れたスキンヘッドの変身派ドラァグクイーンともいえる異色の存在がサーシャ・ベロアです。
1987年6月25日、カリフォルニア州バークレーに生まれましたが、幼少期をコネティカットで、その後はイリノイで過ごしています。
父はロシア史の大学教授、ロシア系ユダヤ人の母もアカデミックな編集者であり、サーシャ自身も現代文学で学士号、ロシア留学を経て、アニメで修士号を得たインテリです。卒業後は、フリーランスのグラフィック・デザイナー兼イラストレーターとして働いていました。
そういったバックグラウンドを活かし、ドラァグクイーンとしてのみならず、クリエイターとしてもさまざまな活動をしています。ニューヨークタイムズに絶賛されたクラブイベント「Nightgowns」のプロデュース、Tシャツデザイン、また隔年発行の雑誌「Velour, The Drag Magazine」の創刊など、ジャンルは多岐にわたっています。
現在はニューヨークのブルックリンでパートナーと暮らしています。
シーズン10(2018年):アクエリア/Aquaria
弱冠22歳で栄冠を勝ち取ったアクエリアは、1996年2月12日、ペンシルベニア州ウエストチェスター生まれです。
ファッション・デザインを勉強するため、ニューヨークの名門FITに入学しましたが、2学期で退学。
2014年にドラァグを始め、シャロン・ニードルズの言わば「弟子」として、番組に出場する前からすでにインスタグラムなどで大人気のドラァグクイーンとして広く知られていました。
優勝後は、大手モデル事務所と契約し、ヴォーグ・イタリア誌に登場したり、モスキーノやH&Mのショーに出演したり、コスメブランドのMACのイメージモデルをつとめたりと、かなりの売れっ子ぶりです。
シーズン11(2019年):イヴィ・オードリー/Yvie Oddly
奇抜なメイクと体の柔軟性をいかしたパフォーマンスで他のドラァグクイーンと一線を画すイヴィ・オードリーは、1993年8月22日、コロラド州デンバー生まれ。
幼い頃から体操を続けていましたが、15歳のときにエーラス・ダンロス症候群を患い、その道を断念しました。
シーズン4のシャロン・ニードルズに憧れてドラァグを始め、彼女のMV「Dressed to Kill」にエキストラとして出演したりしています。
優勝後は、番組出演のドラァグクイーンたちで構成された「Werq the World」ツアーのメンバーとして全世界を巡回。また、2020年には、ラスベガスのフラミンゴホテルで上演されたショー『ル・ポール・ドラァグ・レース・ライブ!』にメインキャストの一人として登場しました。
シーズン12(2020年):ジャイダ・エッセンス・ホール/Jaida Essence Hall
新型コロナウィルス禍の中、開催されたシーズン12で優勝したのが、正統派ブラックビューティーのジャイダ・エッセンス・ホールでした。
1986年12月9日生まれ、ウィスコンシン州ミルウォーキー出身。2010年代からドラァグを始め、複数のビューティー・ページェントで栄冠を勝ち取った経歴があります。
メイクアップアーティストの顔も持ち、またドレスはすべて自身でデザイン・製作しています。ちなみにジュエリーはジェイダの恋人が製作しているようです。
ゴージャスな美しさで、「Attitude」誌2020年9月号の表紙を飾りました。
シーズン13(2021年):シモーン/Symone
2021年に放送されたシーズン13で優勝したのは、シモーンです。抜群のスタイルと美しさにセンスを兼ね備え、当初から優勝候補の筆頭でしたが、見事期待を裏切らない活躍をみせました。
シモーンは、1995年1月15日生まれ。カリフォルニア州ロサンゼルス出身ですが、生まれたのはアーカンソー州コンウェーで、3人兄弟の末っ子です。
18歳からドラァグを始め、シーズン12のジジ・グッドらとともに、ファッションとポップ・カルチャーをテーマとする「ハウス・オブ・アヴァロン」の一員としても活動しています。
歴史ある「Interview」誌の2021年9月号では表紙に登場。またMTVビデオ・ミュージック・アワードや、メトロポリタン美術館恒例のMet Gala、エミー賞授賞式などに出席するなど、ホットなセレブとして活躍しています。
シーズン13の出場者とレース詳細は、下記の2つの記事に詳しくまとめてあります。
シーズン14(2022年):ウィロー・ピル/Willow Pill
コロラド州デンバー出身の26歳、ウィロー・ピルが見事優勝し、14人目の女王となりました。
ジャイダ・エッセンス・ホール、シモーンと正統派ブラッククイーンの優勝が続きましたが、今回のウィロウ・ピルは独特の個性を売りにする異色派です。なんでもアルコールや薬などの中毒患者、自分の母親世代の中年女性などからインスピレーションを得ているのだとか…。
難病のシスチノーシスを抱えているそうです。
シーズン14に出場した全14人に関しては、以下の記事で紹介しています。
シーズン15(2023年):サーシャ・コルビー/Sasha Colby
終始、圧倒的な実力と美しさで優勝したのは、サーシャ・コルビーです。2012年の「ミス・コンチネンタル」ページェントの女王であり、番組に出場する前からすでに全米では有名な実力派クイーンとして、期待を裏切らない活躍ぶりでした。
ハワイ州オアフ島生まれの参加者は番組初。現在は、ロサンゼルスとシカゴを拠点に活躍しています。またトランスジェンダーを公言しています。
シーズン15に出場したのは番組最多となる16人。全16人のプロフィールやインスタグラムについては、下記の記事で紹介しています。
シーズン16(2024年):ニンフィア・ウインド/Nymphia Wind
2024年1月から4月にかけて放送されたシーズン16に出場した全14人のクイーンたちの中から、見事栄冠を勝ち取ったのは、ニンフィア・ウインドです。台湾系アメリカ人であり、番組初の東アジア系クイーンの勝者となりました。
ロサンゼルス生まれ、香港育ちで、6歳のときに一家で台湾に戻りました。英国の大学でファッションを学んだのち、2018年に台湾でドラァグクイーンを始めます。「ニンフィア」の名前は大好きなポケモンのキャラクターからとったものでした。
台湾で複数の栄誉に輝いたのち、2022年にニューヨークのブルックリンに…。アジアらしさを活かしたハイセンスなスタイルで、一躍人気クイーンとなりました。
2024年7月に開催されるパリオリンピックに合わせて開かれる「文化オリンピアード」の台湾パビリオンにおいてパフォーマンスすることも決定しています。
シーズン16の14人の出場者については、以下の記事で紹介してます。
今や、世界各国で各国版が放送中!
本国アメリカから輸出され、多くの国・地域で独自のドラァグ・レースが放送されています。
その一覧と、各国版の優勝者については、下記の記事をご覧ください。
どのドラァグクイーンがお気に入りですか?
こうして16人の歴代優勝者を並べてみると、それぞれの独自の存在感と個性を持っていることに驚かされます。
シーズン2の優勝者タイラ・サンチェスがドラァグクイーンを引退したのは残念ですが、今後は別の道での活躍を期待しましょう。
『ル・ポールのドラァグ・レース』に出場した全ドラァグクイーンたちを、インスタグラムのフォロワー数でランキングした記事もありますので、ご覧ください。必ずしも優勝者がトップに位置しているわけではありません!
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