2011年10月3日 から2012年3月31日まで放送された、朝ドラ(連続テレビ小説)第85作『カーネーション』。
一部で「朝ドラ史上最高傑作」と評されるなど、日本のテレビドラマを代表する名作の一つとして知られ、これまで複数回に渡って再放送が繰り返されてきました。
2024年9月23日からは、NHK BSにおいて、通算5度目となる再放送がスタート。そこで、本ドラマをもっと深く楽しむための17の事実・裏話などをご紹介しましょう。
- 朝ドラ屈指の名作、第85作『カーネーション』について
- 朝ドラ『カーネーション』をもっと楽しむ17の事実・裏話
- ①ヒロインのモデルとなった小篠綾子にまつわる事実
- ②綾野剛が演じた周防龍一にも実在のモデルがいた!
- ③糸子の次女・小原直子を演じた女優はプロレスラーだった!
- ④六角精児が演じた松田恵、実はゲイ?!
- ⑤脚本を手掛けた渡辺あやの異色な経歴
- ⑥ヒロイン役の女優バトンタッチが賛否
- ⑦出演者の一人による不祥事で最初の再放送が中止に!
- ⑧ドラマの終盤で「朝ドラ」が劇中劇のように登場したわけ
- ⑨2018年4月に放送された「“朝ドラ”同窓会 カーネーション」
- ⑩糸子の孫・小原里香が不良だった事実はない!
- ⑪放送後、故人も多いキャスト陣
- ⑫一躍、国民的人気女優となった尾野真千子のその後と現在
- ⑬岸和田にある、小原家の生家の現在は?
- ⑭糸子の幼少時を演じた子役・二宮星
- ⑮糸子の神戸の伯父・松坂正一を演じた田中隆三の実姉はあの人!
- ⑯2012年に刊行された『ぼくらが愛したカーネーション』
- ⑰映画『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』が2025年初夏公開!
- 名作朝ドラ『カーネーション』の再放送をお見逃しなく!
朝ドラ屈指の名作、第85作『カーネーション』について
『カーネーション』は、2011年10月3日 から2012年3月31日まで放送された、NHK連続テレビ小説第85作目の作品です。
ファッション業界で活躍するコシノ3姉妹の母・小篠綾子をモデルとしたヒロイン・小原糸子の生涯を描き、少女時代を子役の二宮星、50代までを尾野真千子、70代以降の晩年を夏木マリが演じました。
昭和の古き良き家族の姿、情熱をもってひたむきに生き抜くヒロインの姿は、放送の半年前に起こった「東日本大震災」の悲劇をいまだ引きずるお茶の間に、大きな感動を巻き起こしました。
あらすじやキャストなどについては、以下の別の記事をご覧いただき、ここではドラマをもっと深く楽しみ、理解するための16の事実・裏話をご紹介したいと思います。
朝ドラ『カーネーション』をもっと楽しむ17の事実・裏話
①ヒロインのモデルとなった小篠綾子にまつわる事実
既述の通り、本作のヒロイン・小原糸子のモデルとなっているのは、ファッションデザイナーとして活躍するコシノヒロコ・コシノジュンコ・コシノミチコ3姉妹の実母、小篠綾子(こしのあやこ)です。
小篠綾子は、1913年(大正2年)6月15日、現在の兵庫県加西市生まれ。幼少の頃に、一家でドラマの舞台となっている、現在の大阪府岸和田市に移りました。
ドラマの展開通り、女学校中退後、パッチ店などでの修行期間を経て、自ら「コシノ洋装店」を開業しています。1934年(昭和9年)に、小原勝のモデルであるテーラーの川崎武一と結婚し、後に戦争で亡くしているのもドラマ通りです。2人がもうけた3人の娘が、言うまでもなく、コシノヒロコ・ジュンコ・ミチコです。
74歳で「アヤコ・コシノ」ブランドを創設するなど、晩年まで現役で活動していましたが、2006年(平成18年)3月26日、脳梗塞により93歳で亡くなりました。
②綾野剛が演じた周防龍一にも実在のモデルがいた!
糸子と恋仲になる既婚男性の周防龍一。朝ドラで不倫関係を堂々と描いたことで、大きな話題を呼びましたが、この周防にも実はモデルとなった実在の人物がいます。
2人の関係性はドラマと実話でかなり違いますが、小篠綾子は自伝の中で、およそ20年に渡って内縁関係にあった男性(実名は隠され「T」として登場)がいたことを赤裸々に告白しているのです。
不倫から、内縁の夫というべき存在になり、その間、小篠は自らの3人の娘のほか、Tと彼の妻子の面倒もみていたようです。長い内縁関係の末、結局、Tのギャンブル癖などが原因となって破局。Tは数年後にはガンで死去したようですが、小篠は葬儀にも参列せず、関係は破綻していました。そのあたりの事情は、自伝『コシノ洋装店ものがたり』に詳しく記されています。
コシノヒロコとTの子どもが同じ小学校に通っていた時期もあったようで、母親を奪ったとひどくいじめられたようです。
③糸子の次女・小原直子を演じた女優はプロレスラーだった!
次女の直子を演じた川崎亜沙美は、女優の顔も持つ、本業は女子プロレスラーでした。
女子プロ団体のJDスター女子プロレスやプラファーに所属後、フリーとなり、また女優を兼業するプロジェクト「アストレス」の4期生として、テレビドラマや映画に出演するようになりました。
直子役のオーディションでは一度落選しましたが、見事復活の抜擢。期待に応え、確かな存在感を残しました。川崎亜沙美自身が岸和田の出身です。
現在はプロレスラーを引退し、女優・シンガーソングライターとして活動。2016年に一般男性と結婚し、一男一女の母です。
④六角精児が演じた松田恵、実はゲイ?!
「オハラ洋装店」の経理担当として働く、六角精児演じる松田恵。中村春太郎の大ファンであり、かなり特異なキャラクターですが、おそらくゲイでないでしょうか?
2024年の朝ドラ『虎に翼』では、明確なゲイのキャラクターが登場しましたが、今の時代であれば、松田恵ももっと明らかな形で描かれたはずです。
そもそも、糸子が女性だと思って雇ったのが松田恵だったというのも、何やら隠喩に満ちています。
⑤脚本を手掛けた渡辺あやの異色な経歴
本作の脚本が絶賛され、一躍実力派脚本家としての地位を確立した渡辺あや。近年の朝ドラを手掛ける脚本家たちの力不足が指摘される中、渡辺あやの再抜擢を望む声は今も絶えません。
渡辺あやは、夫の赴任に同行したドイツ在住を経た後、帰国後島根県で雑貨屋を営む主婦として、脚本の執筆を続けていました。そんな中、公募に応募した作品が認められ、2003年の映画『ジョゼと虎と魚たち』で脚本家デビューを果たしたという異色の経歴の持ち主です。
現在も島根県に在住し、寡作ながら秀作映画・ドラマの脚本を発表し続けています。
⑥ヒロイン役の女優バトンタッチが賛否
朝ドラでは、幼少時のみ子役が演じることは常ですが、本作では、青春期から50代までを尾野真千子が演じたあと、晩年では夏木マリにバトンタッチし、賛否を呼びました。
それは、尾野真千子の演技や存在感があまりに素晴らしかったこと、そして夏木マリにバトンタッチした晩年がわずか1か月の放送分に過ぎなかったことなどが大きな理由でした。また、夏木マリの持つイメージが、尾野真千子が作り上げてきた糸子のイメージとは少しばかりかけ離れたことも大きかったと思われます。
さすが夏木マリの演技力もあり、結果として、それなりの完成度にはなりましたが、尾野真千子最後の出演回を事実上の最終回として、残りは付け足しとみる向きも決して少なくはありません。
⑦出演者の一人による不祥事で最初の再放送が中止に!
2013年4月より、NHKBSにおいて最初の再放送が予定されていましたが、出演者の一人・河野智宏の起こした不祥事により、急遽中止となりました。(『純情きらり』に差し替え)
糸子の修行先「枡谷パッチ店」の職人・岡村を演じていた河野智宏は、2013年1月、東京都江戸川区の路上でわいせつ行為を行ったとして逮捕されたことが、2月に報道されます。
しかし、その後、証拠不十分により無罪判決となっていますが、河野智宏自身は芸能界から引退しています。
⑧ドラマの終盤で「朝ドラ」が劇中劇のように登場したわけ
ドラマの中で、糸子が亡くなった後の2010年9月、だんじりのため3人の娘らが集まったところに、糸子の生涯を「朝ドラ」にしたいというオファーが舞い込み、実現に至るという経緯が描かれます。
実際、小篠綾子自身が生前、朝ドラのファンであり、自分が主役になることを夢見ていたと言います。そうした実話がそのまま物語の中に織り込まれたのです。
『カーネーション』の第一回放送を、老いた奈津がテレビで視聴する姿まで描かれますが、奈津のキャラクター自体は架空です。
⑨2018年4月に放送された「“朝ドラ”同窓会 カーネーション」
「“朝ドラ”同窓会 #カーネーション」がいよいよ迫ってきたのでツイートしておきます。尾野真千子さん、麻生祐未さん、田丸麻紀さん、尾上寛之さん、川崎亜沙美らが再集合し、撮影当時のエピソードを語るそうです。【総合】明日 4/7の18:05~放送。そう言えば「マッサン」の同窓会は なかったですね。 pic.twitter.com/L0l8E0N3vj
— ひぞっこ (@musicapiccolino) April 6, 2018
2018年4月10日から10月29日まで、NHK総合において、3度目となる再放送がされました。それを記念して直前に放送されたスペシャル番組が「“朝ドラ”同窓会 カーネーション」です。
糸子役の尾野真千子、母・千代役の麻生祐未、安岡八重子役の田丸麻紀、安岡勘助役の尾上寛之、糸子の次女・直子役の川崎亜沙美、電器店店主・木之元栄作役の甲本雅裕の6人がスタジオで再会し、撮影時に思い出話を繰り広げました。
尾野真千子は当時を思い出して涙するなど、ドラマのファン必見の番組となりました。
⑩糸子の孫・小原里香が不良だった事実はない!
糸子の長女である新山千春演じる優子の次女・小原里香(演:小島藤子)は、夜遊びする不良少女として描かれますが、それは事実とは異なるようです。
小原里香のモデルと推測されるファッションデザイナーの小篠ゆまが、自身のブランドの公式サイト上で、事実とは異なることを発表。また母のコシノヒロコも、事実ではないとコメントしています。
ちなみに、小篠ゆまは、1997年に、母の「ヒロココシノデザインオフィス」に入社し、翌年に自身の「YUMA KOSHINO」ブランドを立ち上げました。
⑪放送後、故人も多いキャスト陣
2012年3月の放送終了後、2024年9月現在、まだ12年半の年月しか経過していないにも関わらず、残念ながら多数の故人がいます。
まず最も近年では、糸子の父方祖母・小原ハルを演じた「かしまし娘」の次女・正司照枝は、2024年7月8日、急性心停止により91歳で死去しました。
糸子の母方祖父・松坂清三郎を演じた宝田明は、2022年3月14日、誤嚥性肺炎により87歳で死去。
糸子の幼なじみにして生涯の親友・吉田奈津の晩年を演じた江波杏子は、2018年10月27日、 肺気腫により76歳で死去。
糸子の修行先「紳士服ロイヤル」の店主を演じていた、「帰ってきたウルトラマン」の団時朗は、2023年3月22日、肺がんのため74歳で死去。
生地問屋「川瀬商会」の社長を演じた佐川満男は、2024年4月12日、胆嚢炎により84歳で死去。
糸子が病院内でのファッションショーを企画する、岸和田中央病院の頑固な総婦長を演じた山田スミ子は、2019年2月12日、直腸がんにより73歳で死去。
善作の客で地主の神宮司源蔵を演じていた石田太郎は、2013年9月21日、心筋梗塞により69歳で死去しました。
⑫一躍、国民的人気女優となった尾野真千子のその後と現在
尾野真千子は、主演デビュー作となった1997年の河瀬直美監督作『萌の朱雀』における演技が絶賛されるなど、早くからその実力は高い評価を得ていましたが、本作により、いよいよ国民的人気女優となりました。
その後もキャリアは順調で、2024年には、『虎に翼』のナレーションで久々に朝ドラに復帰しました。
私生活では、最初の結婚に失敗したのち、2021年に一般男性と再婚し、現在は沖縄県北部の今帰仁村に暮らしています。女優業のかたわら、夫婦で「昭和居酒屋 北山食堂」を経営しているようです。子どもはいません。
名称 | 昭和居酒屋 北山食堂 |
住所 | 沖縄県国頭郡本部町谷茶28-7 |
電話番号 | 0980-56-1555 |
公式アカウント | https://www.instagram.com/izakaya_hokuzan?igsh=MWtvemdsdGZvMnh2eA%3D%3D |
⑬岸和田にある、小原家の生家の現在は?
小篠綾子が生涯を過ごした生家は、現在、「おばんざい あやこ食堂」となっています。
2階はギャラリーとして、綾子が実際に使っていたミシンや洋裁道具、家族写真などが展示。地元の人のみならず全国から『カーネーション』ファンが訪れる聖地となっています。
名称 | おばんざい あやこ食堂 |
住所 | 大阪府岸和田市五軒屋町16-11 |
電話番号 | 072-433-1188 |
公式アカウント | http://koshino3shimai.blog.fc2.com/ |
⑭糸子の幼少時を演じた子役・二宮星
糸子の幼少時を演じた子役・二宮星の演技は大きな反響をよび、糸子の次女・直子役で再登板に至りました。
二宮星はその後も女優として着実にキャリアを重ね、2022年放送の朝ドラ『舞いあがれ!』では、主人公の「岩倉製作所」で働く従業員・土屋景子役で二度目の出演を果たしています。
ちなみに、実弟の二宮輝生も子役として、朝ドラ『ごちそうさん』(主人公夫婦の次男役) 、『マッサン』(小学校の同級生役)、『あさが来た』(ヒロインの弟役)、『まんぷく』(主人公夫婦の長男役)と4作品に出演しています。
⑮糸子の神戸の伯父・松坂正一を演じた田中隆三の実姉はあの人!
【田中隆三】
— トムカンパニー公式 (@TOMcompany_inc) March 13, 2024
連続ドラマ「相棒 season22」が最終回を迎えました!
皆さまご視聴ありがとうございました!#田中隆三 #益子桑栄#水谷豊 #寺脇康文#相棒22 #aibou#テレ朝 pic.twitter.com/OizQNIqItX
母・千代の兄で糸子の伯父にあたる、松坂正一。神戸で家業を継いでいますが、糸子と勝の縁談にあたってはいろいろと奔走しました。
演じていたのは、数々の映画やテレビドラマで名バイプレーヤーとして活躍する田中隆三。『相棒』シリーズに登場する鑑識課の益子桑栄役も人気です。
実は、あまり知られていませんが、実姉は女優の田中裕子! よく見ると、目元がとてもよく似ています。
⑯2012年に刊行された『ぼくらが愛したカーネーション』
放送が最終回を終えて、その感動は冷めやらず、同年末には、『ぼくらが愛したカーネーション』が刊行されました。
評論家や出演者たちなどによる批評やエッセイ、また名セリフ集、視聴者の感想などを一冊にまとめたもので、『カーネーション』ファンには事実上の「ファンブック」ともいえる必読の書物となっています。
⑰映画『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』が2025年初夏公開!
小篠綾子の生涯を描く映画の制作・公開が決定しました。
主人公を演じるのは大地真央。また娘のコシノヒロコを黒谷友香、コシノジュンコを鈴木砂羽、コシノミチコを水上京香が演じることも発表されており、ドラム『カーネーション』と比較して楽しむことができそうです。
公開は2025年初夏を予定しています。
名作朝ドラ『カーネーション』の再放送をお見逃しなく!
『カーネーション』の再放送は、これまで以下の通りです。
2014年4月~:BSプレミアムにて
2015年2月~:有料CS放送「ファミリー劇場」にて
2018年4月~: NHK総合にて
2021年10月~: BS12 トゥエルビにて
そして、通算5度目となる再放送が、2024年9月23日より、NHK BSおよびNHK BSプレミアム4Kにてスタート。
初めての人も、すでに何度目かの人も再び新たな気持ちで、視聴してみてはいかがでしょうか?